胃弱の本棚から〜雑誌と新書編〜

「読書の秋」って、なぜ秋なんだろうかって話ですが。
単にすごしやすい季節になってからって事だけではなく、夜長が読書向きだからという説もあり。
まさきの場合、秋になって本を読みたくなることはないけど、食欲が湧くのは確実だぜ(胃潰瘍は治ってしまったので、また食いすぎないようにカロリーコントロールしなきゃだな…)

最近読んだ本をただ列挙する「胃弱の本棚」たぶんもう4回目。

経済小説作家でもある、橘玲 氏の本。
【マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで】


経済関係の新書としては2006年刊行とちょっと古いですけど、内容に関しては三年後の現在も、そんなに変化はないんじゃないかと。マネーロンダリングに関する、代表的な事件や出来事、近年のライブドア事件などの顛末を、小説家らしい巧みな文章でわかりやすく解説。
マネロン関係のルポとか、事件簿的なノンフィクションは数種あって、海外ジャーナリスト著作の翻訳本も色々出ているんですが、一部は日本語翻訳がかなりお粗末なんです。読みにくい。
この本は小説的要素もありながら、ノンフィクションの枠を超えず、個人的に非常に読みやすかったです。入門書として素晴らしくまとまった一冊だと思います。とはいえ肝心のキャッシュフローについてはとても頭が付いていかないのであった。

ブルータスだったり、日経おとなのOFFだったり、かならずどこかのカルチャーマガジンで、数年に1度は持ち上がるもの、そしてそれを必ず買ってしまうまさき。それが「失敗しないワイン選び」関連。

【Pen 2009年10/1号 ワイン選び最強の法則】


この手の特集ってさ、必ず出てくる不満が、せっかく記事で紹介してあっても選んだ著名人やソムリエ(料理人)の趣味に走ってて

・実勢価格わかんねーよ
・手にはいらねーよ
・高ぇよ
・手長エビのベシャメルソース仕立てなんかと合わせられねーよ

というものなんだけど、この点で今回の「Pen」は「手にはいらねーよ」の部分以外はけっこう使えると思う。いや輸入先が明記されていないものが幾つかあるのは大いに問題なんだけど、「掲載されてるワインの半分が日本で入手不可」って雑誌、前に見たことあるしね。
インターネットのオークション酒販業者なんて、仕入数1〜2本とかでも出品するわけだから、そのあたりは銘柄ピンポイントでググカスって感じに割り切った書き方なので逆にスッキリしていると思う。
おつまみ別のワインコーディネートも、ブルーチーズなどの代表的なものから、コンビニジャンクまでさまざま。
掲載されているワインが、比較的安価なのもうれしい。サライなんかでふつうに、この鴨肉にはムートンロートシルトでどうぞとか書かれてたら、貧しいまさきは、あのラクダマークが憎らしくてしょうがないんだもの。

そういや、この前買ったオーストリアのテーブルワインが美味しかったんだけど、名前忘れたのでまた買ってこよう。スクリューボトル(大好き)でね、キャップがオーストリアの国旗柄になってるので、「慰めの報酬」のブレゲンツシーンで友人と乾杯しながら飲んだんだ。

今年一番感動したワインは、モーゼルの生産者、マルクス・モリトールのリースリング。普段デザートワインは苦手な人にも、ぜひ試してみてほしい不思議な逸品。酒に限らず食べ物っていうのは、口にした途端のビックリが、とても長く記憶に残るから不思議だね。
久保田得月(洗心のほうが好き)、土佐鶴大吟醸(大好物)、越乃寒梅金無垢(特選もあるが)…好みはともかく、飲んだ時おや?なんぞこれ?っていう驚きが好きなんだ。
ちなみにモリトールはまさきの財布ではとても買えない値段なので、もちろん贈り物としていただいた。日本酒の横綱級は、とあるツテで年に1回、安価にたらふく飲める店に行くのだが場所はル様にしか言わない(どうやって)

…それにしても、なんで本の話が酒談議になってるのさ。


胃弱の本棚から〜サスペンス&グリプラ編

慰めはもうちょっと落ち着いてからレビューしますね。
(※三冊目のレビューに「007/慰めの報酬」の軽いネタバレがあるのでご注意ください。)

そういうわけで、内出血が似合う管理人まさきが定期的にお送りする、ベッドサイドの積ん読の中からいくつかご紹介。今回はどちらもスパイが主人公で、いずれ映画化されそうなサスペンスと、すでに映画化が決まってるサスペンス、それに「慰めの報酬」で取り上げられた自然資源グローバル・ビジネスについてのレポ。

■ジェイムズ・グレイディ著『狂犬は眠らない』


任務のしすぎで頭がイッちゃって、いまは情報部が管理する秘密の精神病院に入院する元CIAのスパイたち。それぞれが何かしらの奇妙なハンデ(病癖)を抱え、薬で押さえつつの生活。そんな中、病院内で医者が殺された。スパイたちは真犯人を捕まえるため脱走を計画。クスリが切れるまでに犯人を捕まえなきゃ、みんなキレてしまのだ。フィンチャーあたりで監督されると面白そうですね。


■トム・ロブ・スミス著『チャイルド44』


ソビエト時代の闇歴史、粛清とチカチーロ事件を題材にした、新進気鋭の英国作家トム・ロブ・スミスの処女小説。もともと学生時代から放送作家としての経歴を持つだけに、臨場感とスリルに満ちた仕上がり。リドリー・スコット監督による2010年以降の映画化が決定しているが、現時点ではポスプロ段階。金髪の眉目秀麗なエリート捜査官という設定がなにげにダニエルを想像させるが、ちょっと演じるには歳取り過ぎたか…それに鬼門のロシア語だし(笑)

■『世界の水が支配される!』国際調査ジャーナリスト協会 刊行


水と油って言うけど、実は切っても切れない関係にあって、そこらへんを取り扱ったのが今回の「慰めの報酬」。まさきが交流のあった某大手石油会社の人たちは昨年の原油価格高騰時に、口癖みたいに「やっとボトル入りの水にリッター単価が追いついた」って話をしてたんだけど、今回はその逆なのねと思いながら鑑賞すると面白い。

水男爵(ルネサンスじゃなく)と呼ばれる、わずか数社のグローバル企業による世界中の水資源の寡占化を追う迫真のレポート。もちろん、これ全てを鵜呑みにして余計な危機感を抱く必要はないと思われるし、余計な危機感を煽ることも、一部では水会社の思うツボなわけで。

ああ、世の中SF世界に向かってまっしぐらなんだなあと愕然とする。

結論的にはやっぱり有難い、もったいないと思いながら大切に使うもんなのだが、「ありがたいと思ってるなら、それ相応の金払いなさいよ」ってのが彼らの売り言葉。近年日本国内で頻発する水道管の破裂事故を見ながら、「役人がちゃんと管理しないから…」って軽々しく言ってると思わぬ落とし穴があるんですよって話。
地域的な差はあるとはいえ世界でも有数の豪雨・豪雪地域である日本では、今すぐどうこうという事にはならないと思うんだけど、後先考えずに民営化民営化言ってる政治家の裏でナニが働いているのかっていうことは、「慰めの報酬」でデフォルメされたものを見てちょっと考えるべきか。(この本にも、今回の映画で題材になったボリビアの水道事業民営化問題が紹介されています)
このレポが刊行された04年以降、グローバル社会を取り巻く環境が様変わりし始めているわけですが、搾取の構造はそうそう変わるもんではないんだと思う。

そういえば、「カジノ・ロワイヤル」(原作)ではミネラル・ウォーターの話が出てくるんですよね。海水浴場を中心にしたリゾート地としてのロワイヤル地区(原作ではフランス)が、時代遅れになって不況に陥った後、水事業に乗り出してロワイヤル水ってブランドでフランス国内じゅうに販路を広げようとする。けどヴィシー、ヴィッテル、ペリエのメジャーブランドからの圧力で販路を断たれてジリ貧に。
ヴィシーもロワイヤルも、飲泉つまり温泉鉱水で保養地の特産品であると同時に、第二次大戦中はヴィシー政権が地元の産業を守るためにライバル・ブランドを潰しにかかったのが、大戦後のヴィシー派追放後、その資金を抱えたシンジケートがロワイヤルの復興に出資してカジノも披かれるようになったというお話。フランスのシンジケートといえばアラン・ドロンの『ボルサリーノ』ですねー。あれはマルセイユですけど…ドロンの「なんでこっち視るの!?オレ悪くないよ?」って顔する時が好き。




ブックレビュー:ホネロックと医学系エッセイ。

元・東京監察医院長、上野正彦氏の著書「死体は語る」が大ブームとなり、日本に法医学ブームが訪れた90年代初頭から、法医学専門家によるノンフィクション本が相次いで発行された。



上記の「骨と語る―法人類学者の捜査記録―」は、日本でも先日DVDが発売されたアメリカの連続ドラマ「BONE−骨は語る−」の元となった本で95年に翻訳発行されている。著者ウィリアム・メイプルズは、フロリダ大学自然史博物館C.A.パウンド人体識別研究所長であり、アメリカはおろか、世界的に最も著名な法人類学、おもに骨格鑑定のスペシャリストである。
メイプルズの偉業は枚挙にいとまないが、この著書では彼が扱った多くの事件・鑑定案件のなかでも、特に本人の印象に強いもの、世間的に話題となった15件の記録を取り上げている。
ときに彼はデヴィッド・リンチ監督「エレファント・マン」で知られた故ジョセフ・メリック氏の骨格標本を鑑定し、医学的見地からの価値を証明して、ムーンウォークで有名な男性歌手がその骨格を購入するのを阻止した。
ときに彼はロマノフ王朝最後の王、ニコライ二世とその家族たちがボリシェビキの処刑隊にいかにして殺されたか、その闇に葬られた歴史の真実を彼らの骨から導き出した。

こうした驚くべき様々な事件の真相、そして骨格鑑定技術の精密さなどはもちろんのこと、この本の最大の魅力はメイプルズによる詩的ともいえる文章表現、その教養の深さと、そして時に意地悪で、悪趣味でさえあるけれど思わず笑みを漏らしてしまうブラックユーモアの数々である。どういう本かと言われたら「面白い本」としか言いようがない、そんな本なのである。

***

そういうわけで、今回のブックレビューは法医学など医学系エッセイ・ノンフィクションものになります。
今回ご紹介する本は、すべて実際に起こった事件・事故・案件を専門家や当事者の体験談から書かれたものなので、中には若干ショッキングな内容や写真を含む本もあります。紹介した本をご購読の際にはくれぐれもその点をご留意ください。

◆「墜落遺体」飯塚訓 


日航機123便墜落事故の犠牲者遺体の身元確認作業に、文字通り全身全霊を賭けた刑事である、飯塚氏本人によるノンフィクション。不可能と言われた520名全員の身元確認完了までにいたる、127日の激闘と鎮魂の物語。
極限の味わいかたには様々あるだろう。氏が体験したのもあるひとつの極限状態だった。彼はもとより、法医学にはほとんど専門知識のない地元警察署の警察官たち、そして多くの協力者たちが、ただ犠牲者の冥福のこと、遺族の悲しみと焦りを、「なんとかしたい」という気持ちだけでかいくぐった127日間の極限なのである。
文字通り想像を絶する、飛行機墜落遺体の悲惨極まる描写にページを読み進めることさえ困難となってしまう。しかし、わずかひとかけらの肉塊であっても、かつては愛する家族を持った「人間」なのだという固い信念のもと、警察官・看護師たち、地元の住民たち、さまざまな人々が身元確認に奔走する。猛暑のさなか劣悪な環境のなかで、常に「ひとのために」人事を尽くす、ということがいかにすさまじいものなのか。尽力する人々の姿にきっと読者は圧倒されるだろう。

◆「科学捜査の現場−体毛は【人と事件】を語る」


元・科学警察研究所室長である須藤武雄氏によるノンフィクション・エッセイ。副題を見ない限り、科学捜査全般を取り扱った本なのかと思ってしまうが、副題を見れば分かるように、これはその中でも著者が深く研究を重ねた「体毛」…おもに陰毛を証拠物件とした科学捜査のお話である。
毛の場所が場所だけに、畢竟、性犯罪がらみの記述が多いのでそういうのが苦手な方は避けたほうが良いかもしれない。しかしもろん取り上げられるエピソードは陰毛に限らぬ体毛すべて、あるいは獣毛との鑑別方法などにも至る。ここではいわゆる毛から採取されるDNAによる鑑定はほとんど書かれない。しかしDNAを検出しなくても「毛」からこれだけの情報が得られるのか、と思うと、おちおち抜け毛も捨てていられないというモンである(べつにやましいことはしてないけど)
ちなみに、陰毛の毛先の形状から導き出される著者独自の年齢算出方法はかなり個性的で面白い。

久しぶりにブックレビューでも。

書くことなかったけど書きたい日の恒例行事、本棚の中からブックレビュー第2弾ということで、ここんとこ右舷回避だ航海法だとかいう単語がニュースで報じられていることにかこつけて、航海ものを二冊選んでみましたですよ。

フィクションでは映画「マスター・アンド・コマンダー」で日本でも一躍有名になったジャック・オーブリー・シリーズとか、いつになったら続編が出来るのか出来ないのか、ヨアン・グリフィズの出世作「ホーンブロワー 海の勇者」の原作…どちらもハヤカワ文庫さまのおかげで日本でも読めるわけですが。

今回ここでは、英国海軍サイドのみならず帆船モノというくくりで面白かった本を紹介したいのです。

まずはこれ
 「大帆船 輪切り図鑑」 

その名の通り、英国海軍の大型帆船を、船首部分から順に、縦まっぷたつに輪切りにしていきながら、その構造をわかりやすく図解したイラスト本。子供向けの図鑑なんだけど、大人が見ても十分楽しい。ウォーリーを探せ!のレベルが高くなって帆船版になった…という感じでしょうか。
この作者のスティーブン・ビースティは、「クロスセッション」というこの輪切り図鑑シリーズの作者であり、他にも客船内部などの連作があり。当時の海軍帆船の日常や、生活用具などをユーモアやウィットをこめて紹介する最高に楽しい絵本です。

お次はうって代わってフィクションもの。
 「ジャマイカの烈風」

ジャマイカで農園を経営するイギリス人実業一家の子供たちが、スクーナー船の海賊に襲撃を受け、彼らの捕虜となることから始まる奇妙な共同生活と緊迫感を描く。子供の純粋さゆえの残酷さ、男勝りで勝気な少女が、海賊船という男たちだけの極限の世界で、まるで湖面に投げた小石のように広げた波紋。そんな時、突発したひとつの殺人事件をめぐり、海賊の大人たちは無邪気な子供たちに翻弄されはじめる。。
この本は、児童文学という枠を超えた古典的名作としてイギリスでは1960年代の発表当時から現在に至るまで、長く読み続けられています。日本では筑摩書房さんが翻訳し、70年代になってこの晶文社版が再び脚光を浴びています。こちらの翻訳は、パール・バック「大地」の翻訳で著名な小野寺健氏。
ちなみに、この本に出てくる年長の女の子(思春期に入るか入らないかの独特の怪しさで、船内の人間関係を、じわじわと侵食する)もし映画化したら絶対に配役にはダコタ・ブルー・リチャーズ(ライラ)を推したいんだな〜(彼女に翻弄される船長役はトーマス・クレッチマンで!)

帆船モノといえば海賊。昨今のパイレーツ・ブームでいきなり注目された本がこちら(大ヒット漫画「ONE PIECE」の作者が必携している本として、マンガファンからも買われているようです)

 「海賊大全」 

黒ひげエドワード・ティーチとか、紳士海賊ベラミー、女海賊メアリー&アンなど、代表的な実在の海賊たちについては、ほとんどこの1冊読めば概要をコンプリート。海外では複数出ている海賊研究本ですが、邦訳されているものは、おそらくこのコーティングリー著の数冊だけではなかろうか。この本では有名な海賊以外にも、バッカニア(初期のフランス系海賊)時代から、アジアの海賊まで、幅広くその歴史と特徴が解説してある。定価5,000円はちょい高いけど(現時点、尼では中古のみ2千円台から取扱)、海賊について調べたいという時が人生において訪れたら(笑)この1冊でまずOKという素晴らしい本。

***

番外編。いまから読もうとしている本。


もちろん、あなたの(事を舐めるように調べる)ためですよvvvv

 うわ、フツーに引くわ…。



たまにはあのエロ兄さんの国を真面目に研究。


【週刊 東洋経済1月12日号〜北欧はここまでやる!】

先週、日経の見出しで見てから発売を待ってたんですけど、トーベ・ヤンソン先生の表紙も良かったのか、近所の書店ではかなりの売れ行きで、ラスト1冊でした。北欧型の実験的社会システムが、今後も成長し続けるという観点から、「格差なき経済成長」の秘密にせまるという特集です。

普段、ハムうまい、チーズうまい、家具かわいい、マッツえろい…という認識でしか北欧(デン)を見ていないので、たまにましっかりお勉強をと思いましてね。セカンド・トピックはソニーの08年展望ってことで、こっちもなかなか興味深い。ああ。。。ブルーレイになってしまいましたねえ…PS3買うべきかなあ。

読んでて知ったけど、この雑誌、「ハゲタカ」の真山仁先生が新作の連載してるんですね。買ってよかった。

しかし何というか、松がらみでデンの社会制度に関する本(たいがい福祉系のコンテンツ)を幾つか買いましたが、どれ取ってもデンはこの世の楽園…みたいな書き方なんですけどね…今回の東洋経済の記事も北欧礼讃って感じですが。以前に某たかじんの番組でスウェ至上主義のおばさんが、M崎さんたちにケッチョンケッチョンに言われて「まー確かにそうですよねぇw」と最終的にみょーに納得(=北欧式を日本に導入するのは土台ムリな話ってこと)してた事を思い出し、たまにはああいう風なノリでざっくばらんに、北欧システムの問題点をたくさん上げてくれるような記事も読んでみたいものです。問題無いわきゃ無いと思うんで。
まあ絶対、日本よりは住みやすい部分が多いのだろうけど、ここの管理人はナナメからみるのが好きな根性曲りなので、良い良いばかり言われると、悪い部分を見てみたくなるのですよ。

少なくとも「プッシャー」見る限りは世界一幸福な国とばかりも言っておられないような気もするよ。まあ、トニーたんとフランクがいちゃいちゃ…もとい仲よくしているのを観ているこっちは幸せですが。


トニー「ビデオばっかり見てるとバカになるぞマサキ…。」
(あんたに言われたくない)

胃弱の本棚から。第1回

なんかブログ更新したいけど、することないなあ。

ということでカテゴリーを追加してみた。
こういう質問は有難いというのか、よく人から「普段どんな本を読んでいるのですか」と問われることがある。この質問をする人間の真意としては二種類あると思うけれど、
・その人の会話を聞き、その嗜好性に好意をもって、
 より深く理解するために質問する
・その人の会話を聞き、その嗜好性に異常さや奇妙さを感じて、
 警戒感から質問する

わたしが投げかけられる場合は、圧倒的に後者なんだろうな。ほっとけ(笑)

なので、後者の意思がありありと見えた場合はこう答えている。
「文学はほとんど読みません。資料や論文、ドキュメンタリーものです。
漫画も多いです。いろいろな本を持ってますが、わたしの本棚を見て
もらっても、どういう性格の人間なのか決めるのは難しいでしょうね」

実を言うと、ほとんどの人間の本棚は、特定の専門研究家のそれを除けば、見てただちに持ち主の傾向性を測れるようなものではないと思う。本棚には持主の趣味の遍歴、精神の変遷、生活の変化、世間の流行、景気の動向が大いに影響するからである。なので、どちらのパターンにおいても「普段どんな本を読んでいますか」という質問でその人の傾向性を図るのは全くナンセンスだと個人的には思う。

私の本棚は、過去に大幅な統廃合を数回繰り返しており、捨てても惜しくない程度の本はとっくの昔に消え去り、惜しいなと思わせる本さえごくわずかで、断腸の思いで捨てたり売ったりしたものも少なくない。そういうわけで、いまここにあるのは、わたしがどのような苦境に、どのような経済的困窮に、どのような角地に立った時でさえ、最後通告のその日まで、手元にあったほうがいいと判断したものだ。もちろんこれは現在の状態でのラインナップだから、入れ替えや更なる淘汰は、またあるんだろうと思う。

そのほとんどは、先に書いたように資料や論文、新書、古典、いくつかの完結したマンガと、ドキュメンタリーやルポタージュなので、こういうものはその人に必要がなければ読む機会も永遠に訪れないものだと思うから、いくら気に入っていてもここでご紹介して面白いものでもない。

だから、せっかく本棚紹介という場所を作ったからには、なにかヒマがあって、一般的に面白く、これはいいぞという本を何冊か選んで挙げてみたいというカテゴリーなんである。

前置きが長くなったけど、第1回目はこれです。



これねー。表紙のイメージがあったら興味湧くと思うんだけどね。
これを書いたのは、ある分裂病(この病名の定義は、この本が書かれた当時の精神医学の通念に準ずる)の少女を長年診察してきたセシュエーという女医さんのまとめた本で、その中身は、分裂病患者である少女ルネが、回復時に自らの実体験(分裂病患者にとって世界がどのように見えるか)をつづった手記となっている。表紙はルネ本人の写真と言われているが、なんとも物憂げな驚くほどの美少女である。
特筆すべきは、ルネのその文才。一般に多くの分裂病患者は彼らの社会に対する認識のしかたや、ものの見え方を論理的に説明することが困難とされている。ルネはセシュエー医師との交流の中で、重篤なこれらの症状を改善することができ、その回復期に、それまでの人生を独特の文体でつづった。それがこの本なんである。(後半はルネの手記に対する、セシュエー医師の分析論文となる)

ルネが語り、彼女を苦しませ続けた「非現実感」との、長い長い内面的闘争は、一見理解しがたい彼ら患者が、どのような苦悩と膨大な想像の中に生きているかを垣間見せるようで、また実体験者にしか書けないルネの独特で美しい文章が心を打つ。もちろん、ルネの体験と回復は、すべての患者に当てはまる治療法とは言えない。訳者による昭和46年の追記によれば、セシュエー医師の死後、研究機関で元気に働いていたルネが一時病状を悪化させたという噂があったという。ルネさんがいま御存命であればかなりのご高齢になるが、どうか元気であってほしいと切に思う。
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